丹後ちりめんから生まれた絹の入浴液で   お肌しっとりつるつる – 京ものストア
丹後ちりめんから生まれた絹の入浴液で   お肌しっとりつるつる
2021.12.01

丹後織物工業組合きぬもよふ

 秋から冬にかけての“浦西(うらにし)”と呼ばれる雨や雪の多い湿潤な気候にみまわれる京丹後市。日本海からの湿気を含んだ風がもたらすこの気候は乾燥しがちな冬でも比較的湿度が高く、お肌は乾燥しにくく、味噌や日本酒など発酵食品が作りやすい環境なのだそうです。そしてもうひとつ絹織物生産にも適しているのです。

良質の水と生糸の出会いから生まれたブランド織物

丹後独特の湿式八丁撚糸機。糸を撚る工程においても常に水をかけ、湿らせた状態で撚ることで、丹後独特の立体感を持つ「強撚糸織物」を生み出しています。

 丹後といえば丹後ちりめんを連想するほど名高い絹織物を生み出し、和装を中心に一大産地として全国にその名を知られてきました。ここでは湿式八丁撚糸と呼ばれる独特な撚糸技術が用いられています。これは絹糸を覆う“セリシン”と呼ばれるタンパク質の性質を生かして、水を生糸に垂らしながら行うもので、これが丹後独特の立体感のある織物を生み出すことになりました。また絹織物の繊維に含まれる不純物を取り除いてシルク本来の美しさと光沢を出す精練加工の工程では、絹糸の繊維の表層を覆っているセリシンなどを取り除くのですが、この加工にも多くの水が使われます。丹後のシルクには風土が生んだ豊かな水が大きな役割を果たしてきたのです。

織り上がったちりめんのセリシンや汚れを洗い流す精練の工程

 ところでこの精練工程で洗い流されるセリシンに着目したのが丹後織物工業組合のメンバーです。丹後ちりめんの排水処理を研究する中で、廃液の中に含まれるセリシンは絹の天然保湿成分であり、これをなんとか有効に再利用できないかという取り組みがはじまったのです。生糸はしなやかで美しい絹糸になるフィブロインという極細糸の部分とそれを取り囲むセリシンでできています。セリシンは絹の1つの成分で蚕を孵化するまで守っている繭のシェルターであり、お肌をしっとりと保ち刺激から保護する働きが優れていることがわかりました。

精練には水が最も重要です。丹後の水は良質であることから、
やわらかく、溶けるような手触りのシルク生地が得られるようになったのです。

精練加工の水から化粧品が生まれる

 組合職員がセリシンを抽出し、京都府織物機械金属センターの職員と化粧品メーカーも巻き込んで天然保湿成分を生かした商品作りを目指して研究を重ねました。丹後ちりめんから絹セリシンを水だけで抽出して、安全で繭の糸が自然の状態で発揮する性質を引きだした新商品は“きぬもよふ”と名付けられ、2001年に基礎化粧品のシリーズがスタートしました。

セリシンの持つ高い保湿力を生かして製品化された化粧品“きぬもよふ”

 「“きぬもよふ”のネーミングは当時の組合理事長の発案と聞いています。セリシンはアミノ酸組成が人の皮膚の天然保湿因子のアミノ酸組成とよく似ているので、お肌に優しいといえると思います。私は展示会のアテンドから事務作業や時には出荷までやっています」と丹後織物工業組合で“きぬもよふ”を担当する茂籠美穂子さん。2002年には“まゆのお風呂ボトル”が誕生。髪や身体を乾燥から守るまゆシリーズが加わりました。

 「当初は大々的なプロモーションの資金もなく、サンプルを持ってあらゆるところを駆け回っていたそうです。その中でTVに取り上げていただくことがあり、放送後には最高売上げを更新したと聞いています。私が担当になったときのまゆのお風呂ボトルは、形が四角でちょっと堅いイメージでした。2018年頃にリニューアルする機会があったので、女性に抵抗なく使っていただけるようにボトルの形やデザインを優しいイメージにし、成分にも植物エキスを増やしたくて4種類いれてもらいました」という茂籠さんは2014年から組合の新規事業部の担当として、プロモーションに携わってきました。「入浴液なので化粧品のようにその場で試していただくことができないんですね。だから香りテスターを使って香り体験をしていただいたり、サンプルをお渡ししてご自宅で試していただいたりしています。価格が一般的な入浴液に比べて高価なので、良さを知っていただくには使っていただくしかないんです。なので展示会やイベントに参加して、より多くの方に知っていただく機会を作っています」。

絹の天然保湿成分絹セリシン配合の絹から生まれた入浴料。
絹織物(丹後ちりめん)から絹セリシンを水だけで抽出するまゆの糸が自然の状態で発揮するすばらしい性質を引き出しました。
乳白色のお湯が体にやすらぎをあたえ疲れをほぐします。

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まゆのお風呂ボトルは贈り物としてのニーズが高まったという評価から丹後ブランド認定商品の優秀産品に選ばれ、見本市への出展やふるさと納税の返礼品としても活用されています。

「ふるさと納税返礼品に登録して1年、新規のお客様やリピーターも少しずつ増えてきていますし、お客様の声に応えられるように日々勉強させていただいています。これからはギフトにも力を入れていきたいですし、自社のECサイトだけでなく、私共の商品を扱っていただく企業様のサイトもありますので、より多くの方に知っていただきリピーターになっていただけるよう発信していきたいですね」と茂籠さんたちは、ファン作りから地域ブランドの確立への施策を一歩ずつ進めています。

絹の産地の未来図を描く

「丹後織物工業組合は丹後の絹織物の精練を一手に引き受けています。工場の近くにある竹野川の水をくみ上げて精練に使用しているのですが、竹野川の水は軟水で量も豊富です。この水をさらに良質の軟水に加工して精練することで、しなやかで柔らかい風合いのシルク生地になるんです」という茂籠さん。古来から精練工場はお米や酒が美味しい地域につくられることが多く、精練には良質の水が重要であり、良質の水は、良い山や地質から生まれるものです。まゆのお風呂ボトルをはじめとする“きぬもよふ”の事業には、この丹後の歴史と自然風土を背景にした物語があり、絹の精練の副産物という発見のストーリーがあり、入浴液や基礎化粧品の市場への参入という新たな可能性への挑戦があります。

シルクの品質は水や湿度に左右されます。丹後の豊かな自然風土と水の良さが丹後ちりめんを生み出しています。

 丹後地方の絹織物の歴史は古く約1300年に及ぶといわれ、江戸時代に生まれた丹後ちりめんは友禅染などの着物生地の代名詞となり日本一の絹織物産地となりました。今も着物生地の約7割を生産する産地ですが、和装産業の衰退と共に、規模は全盛期の100分の1ほどに縮小しています。しかしながら江戸時代に西陣からちりめん織りの技術を持ち帰って丹後ちりめんを生み出したように、化学繊維時代の到来、和装から洋装への市場の変化にも対応して織物の総合産地化を図り、新たな商品開発や市場の開拓にも積極的に取り組んでいます。

地方の再生にとって生産者と消費者を直接結ぶコミュニケーションは大きな役割を果たします。“きぬもよふ”を通して消費者が何を思い、何に反応するかを知ることでものづくりへのフィードバックも得られることでしょう。絹の産地から次に何が生まれるのか楽しみです。

丹後織物工業組合 TOC事業課 きぬもよふ

〒629-2502
京都府京丹後市大宮町河辺3188
TEL: 0772-64-2871
FAX: 0772-64-2146

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